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- スローエアロビックとは?
スローエアロビック®は、JAFが健康寿命の延伸を目指して開発した運動プログラムです。このプログラムは、2006年から静岡県袋井市で始まった『エアロビックの町づくり』プロジェクトの一部として、筑波大学の征矢英昭教授の指導の下、脳を活性化させ認知症を予防する効果が期待できる「軽運動」として考案されました。
スローエアロビックは、単に激しいエアロビックをゆっくりと行うだけではなく、カロリー消費よりも「体幹コンディショニング」として体をほぐし、気分を良くすることに重点を置いています。音楽に合わせて楽しく体を動かすエアロビックの魅力を、低強度領域の運動にも広げることを目指し、無理をせずに自分のライフスタイルに合わせて実践できるように考えられています。
現在は、スズキ株式会社の支援を受けてSDGs(持続可能な開発目標)の「すべての人に健康と福祉を」に沿った社会貢献活動として展開しています。全国47都道府県のエアロビック連盟や関係者と協力し、元気な高齢化社会の実現に向けて取り組んでいます。
スローエアロビックの動きは体に無理のない「シンプル」な運動を繰り返すので振りを覚える必要がありません。音楽に合わせて運動すると気分もよくなり「スマイル」になります。運動はウォーキングと同じ低強度。運動が苦手な方でも取り組みやすい「ソフト」な運動です。
研究によると息が弾むくらいのソフトな運動を10分間行うだけで前頭前野や海馬が活性化して認知機能が向上することが明らかになっています。また、3つの動きで体幹をほぐすコンディショニングエクササイズとして、姿勢と呼吸を整えます。
■体幹のコンディショニングが整う
背骨の屈曲伸展、側屈や回旋といった3つの動きを組み合わせて動くことで、腰部や背中がほぐれ、体幹の機能的な動きが改善します。
■体をほぐして姿勢を良くする
姿勢を保つ抗重力筋を刺激して美しく若々しい姿勢を保ちます。
■リズミカルな呼吸を促す
肩甲骨や肩関節の可動域を高めると同時に呼吸を補助する筋肉を刺激し、日常での深い呼吸を促します。
■転倒予防につながる
重心移動を伴う様々な動きにより日常動作の操作性が高まり、転倒予防につながります。
これまで健康維持・向上のためには、中程度の運動で「ややきつい」と感じる最大努力の50%~60%の運動が薦められてきましたが、高齢者や運動が苦手な人にはそのレベルでは「長続きしない」という問題がありました。
しかし、高齢者や体力のない運動初心者でも「楽である」と感じる最大努力が30%~40%の低強度の運動であれば、気軽に始められ継続性も期待できます。その心拍数の目安は90~110拍程度です。この低強度の運動が「軽運動」と呼ばれる概念です。
さらに、軽運動で身体効果を高める条件として重視されるのが「気分」です。このため音楽の活用や仲間と一緒にやることで気分を高めることが効果的だと云われています。
では、なぜ軽い運動でも脳は活性化するのでしょうか。実は、体を動かすことそれ自体が、脳を活性化させるのです。
例えば、筋肉が動くのは、頭頂部にある「運動野」が筋肉に対して指令を出すからです。また、運動の計画には「前頭前野」が必要ですし、細かな動きの調整には「小脳」が活動します。つまり、体を動かすためには、様々な脳の場所が協力して働く必要があるのです。
一方、筋肉が動くと、筋や腱、そして関節などから発せられる情報(感覚刺激)が脳に戻ってきます。
このように、脳と筋肉のコミュニケーションのサイクルができると、脳はどんどん活性化していきます。脳幹で心の安定をもたらすとされるセロトニンや、意欲を高めるノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質がたくさん作られると脳は元気になります。
その結果、体を動かすことで脳は活性化し、私たちはリラックスしたりイキイキしたり、気分が変わっていきます。つまり、運動は気分をコントロールする「ムードチェンジャー」の役割があるのです。
現代社会に生きる私たちは、日々さまざまなストレスを抱えています。短期間で適度なストレスは心身にとってよい効果を与えますが、ストレスが過度であったり長期間に及んだりすると、心身をむしばむ悪いものになりかねません。
ストレスが長引いて脳(海馬など)に元気がなくなり、何事にも意欲が湧かないうつ状態へと陥るリスクが高まります。今や、大人のみならず小中学生のうつ症状やひきこもりも社会的な問題となっており、いつも元気がなく、やる気の出ない人が増える傾向にあるのです。
日々のストレスに負けず、前向きで意欲にあふれた毎日を過ごせるような脳の状態を作ること、それを征矢英昭教授(筑波大学)は「脳フィットネス」と名づけました。脳が適度に活性化していて快適な気分でやりたいことができる状態を保つには、つい笑顔がこぼれるような運動を生活に取り入れることが大切です。
征矢教授の研究グループは、運動初心者や体力の低い方でも楽しく脳フィットネスを高められる運動として、散歩やヨガ、太極拳程度の強さなど身体に負荷の少ない運動に着目しました。
軽い運動は運動としての効果がないのではないか、運動とは、きつい負荷がかかってこそ意味があるものと思う人も多いと思いますが、征矢教授の研究グループでは、息が少し弾むくらいの軽い運動を10分間行うだけでも、意欲や気分、認知を司る前頭前野や海馬は十分に活性化し、認知機能が向上することが最新の研究によって明らかになっています。
気分は脳フィットネスの重要な指標です。気分を簡便かつ短時間に繰り返し測定できる方法として「二次元気分尺度(Two-dimensional mood scale:TDMS)」(特許取得:坂入、征矢)があります。これを使って検証した結果が左の表です。
ラジオ体操より快適度や覚醒度が上がり、ポジティブな方向に変化しています。
音楽に合わせて運動した場合と、電子メトロノームのテンポのみを聞きながら運動した場合の効果を比較した結果、音楽に合わせて運動すると気分がより快適になり、ストループ課題の反応時間もより速くなりました。さらに、個人ごとの変化を調べると、運動により気分が快適になった人ほど認知機能が向上し、前頭前野の背外側部の活動が活発化していたことが分かりました。つまり、運動で前頭前野の働きを高めるためには、気分が快適になるかどうかがカギということです。
(右図)気分とストループ課題の結果 気分の変化と認知機能の変化の関係
※「脳フィットネス」は筑波大学征矢英昭教授の登録商標です。
※「スローエアロビック」は(公社)日本エアロビック連盟の登録商標です。